ルカによる福音書15:1-10
一匹が迷い出たら見つけだすまで探し出す羊飼のたとえ、また１ドラクメを見失 ったので、それを懸命に探し出す女性のたとえ、これらは、主イエスのところに集 まってきた罪人や取税人について、ファリサイ派や律法学者が不満を述べたことか ら語り出されたものです。神から遠く離れ、罪の中に生きている一人の人に対する 神の思いがどのようであるかについて、これらほど明らかに示されているものはあ りません。 このたとえの中に出てくる羊飼にしても、女性にしても、自分の持っているもの で失われたものを必死に探し出す生き方、また、それを見つけだしたときに大喜び して、近所の人や友人にまで「一緒に喜んでください」という喜び方は、特別に変 わった態度ではありません。しかし、これがわたしたちに対する神のあり方だと聞 かされること、これは律法学者たちの考えとは全く違うことですし、また、わたし たちにとっても、驚くべき新しさではないでしょうか。もし、その神の恵みに目が 開かれるなら、わたしたちはもはや、古い人として生きることはできません。どの ようなときにも、新しい希望を持つ人になります。 二つの種類の驚くべき神の恵みが、ここに示されています。一つは、「尋ねもと め、探し出す恵み」です。自分の危険を顧みないで探し回る羊飼のような神、明か りをつけて掃除をして這い回って隅々探し回る女性のような神、それがここに示さ れている神の姿です。恵みに満ちてはいるが、その存在を隠しておられ、優しく動 かない神などではないのです。また、もう一つは、「迷い出たものを喜んで受け入 れる恵み」です。迷い出た羊を見つけたら、それを肩にのせてかえってくる羊飼。 そんな余分なことをするのはなぜか。「喜びのあまり」なのｄす。正しい者だけを 受け入れ、悔い改めた者を受け入れてから後も、また罪の道に走るのではないかと 監視しているような神とは全く違います。主イエスがわたしたちに明らかに示して くださる神は、このような恵みの神です。 主イエスがわたしたちと同じ人となって、その生涯を通して示してくださっちる 神は、まさにこのように、罪の深みに落ち込んで動きのとれなくなってしまってい る一人の者のために、はるかに遠い道をものともせずに尋ねて見つけだし、何の留 保もなく受け入れて喜んでくださいます。主の生涯と十字架の復活はまさに、その ことを示しています。