1月21日
2001年1月21日

「滅びの時は、解放の時」

ルカによる福音書21:20-25


 

 主イエスは、神の都エルサレムの滅亡と、さらにその後で太陽と月と星とに徴が現

れ、天体が揺り動かされる世の終わりの時、そのようなときに、「人の子が大いなる

力と栄光を帯びて雲に乗ってくるのを人々は見る」ことを告げられます。ここにはわ

たしたちの希望の持ち方の究極の事態が教えられています。

 まず、エルサレムの滅亡について、「エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そ

の滅亡が近づいたことを悟りなさい」。この主の言葉を伝えているルカは、すでにこ

の言葉がじつげんしたことを知っていると考えられます。AD66〜70のユダヤ戦

争によってイスラエルの首都エルサレムは皇帝ウェスパシアヌスに率いられたローマ

軍によって完全に廃墟と化しました。この間に捕虜となった者97,000人、死亡

した者110万人とヨセフスは伝えています。主イエスは、その時に備えて生きると

共に、その時を弟子たちが生き抜いて行くように教えています。生き抜く秘訣は何か。

「この町から逃げなさい」です。110万人もの犠牲者を出したのは、過ぎ越しの祭

りでエルサレムに集まった人々がそのまま閉じこめられたり、その時こそ終末の時と

狂信して悲惨な最期を迎えたからと伝えられます。終わりの時の生き方の一つは、き

わめて現実的なこと、「逃げること」です。いたずらな生命を賭した闘いなどを信仰

の闘いとは見ないのです。

 継ぎに主が語られる終末の危機、天体が揺り動かされ、海がどよめき荒れ狂う世界、

すべての地球環境が生きるものの存在を拭い去るようなとき、このような自然世界の

破局、物理的な世界の崩壊の時、このようなとき、「人の子」が力と栄光を帯びて雲

に乗ってくる、というのです。しかも、それは、信仰者だけが見る主観的・内省的な

事態ではなく客観的な出来事として、「すべての人が見る」ことになると。さらに、

この時を、ユダヤの黙示文学の多くのように、神の怒りの裁きの時として迎えるので

はなく、解放の時として迎えなさい、というのです。「身を起こし、頭をもたげなさ

い。あなたの解放の時はちかい」と。この驚くべき逆説に注意しましょう。破局の時

が救いの時、危機が解放の時です。主イエスの福音の逆説、死すべきものが復活し、

罪人である故に救われ、弱いときに強く、試練の時に逃れる未知が示される、神の一

方的な恵みを考えるのでなければ、成立しようのない福音の逆説がこの終わりの時に

いよいよ明らかになると。


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