6月10日
2001年6月10日

「はかり知ることのできない神の計画」

創世記45:1-15


 
 アブラハムの子、イサクの子、ヤコブの12人の子のひとり、ヨセフの生涯につい

て。その生涯のクライマックスのところで、ヨセフはこのようにいっています。「わ

たしはあなたたちがエジプトに売った弟のヨセフです。しかし今は、わたしをここに

売ったことを悔いたり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神が

わたしたちをあなたたちより先にお遣わしになったのです。」

 父の偏愛を受けて育った夢を見る少年のヨセフ。他の兄弟たちのねたみを受けて殺

されそうになったところを、危うくエジプトに売られて奴隷になります。その中で努

力して王の侍従長ポテファルのところで好意を得、頭角をあらわして家全体を管理す

る人になりますが、ポテファルの妻の暗い欲望ゆえに、牢獄で数年をすごさねばなり

ませんでした。牢獄で知り合った王の給仕役と料理役の夢を解き明かしたことがきっ

かけとなって、王の夢を解き明かすことになり、ついに、エジプトのファラオ王の一

切の権威を代行する人になります。ヨセフは普通の人の何倍もの人生の変転を経験し

た人、特別な才能と、それがための独特のゆがんだ性格、他者の痛みの分からない人。

挫折と打ちのめされる経験をしても、そこから不思議に立ち上がり、誰もが到達でき

ないほどの成功と栄光を経験する人。

 このヨセフが自分を売り飛ばした兄弟たちと再会するときが訪れました。穀物を得

るためにユダヤからやってきて、それとは知らずにエジプトの宰相となっているヨセ

フの前に現れたのです。人の心はトラウマをどのように克服することができるのか。

ここに記されているヨセフは、単純に過去の罪を赦し、寛大な心で兄弟を憐れみ、赦

す人に描かれているわけではありません。謀り事をめぐらして兄弟たちを試し、困惑

に陥れ、命を脅かしています。しかし、ついに涙とともに自分の身分をあらわすとき

がきました。「わたしはあなたたちがエジプトに売った弟のヨセフです!。」ここで、

ヨセフが語っている言葉は、不思議な言葉です。「・・・あなたたちを生きながらえ

させて、大いなる救いに至らせるためです。わたしをここへ遣わしたのは、あなたた

ちでなく、神です。」ヨセフは、自分の人生の意味を問う人です。そしてその答えを

思わぬところから得ています。神がわたしをここに遣わした。神の計画から、自分の

経験を編成し直しているのです。現在、切れやすいと言われる人の心は、どのような

言葉によって養われているのでしょう。神を信じ、主イエス・キリストの恵みによっ

て神の計画の性格をもっとよく知っている者にはこのヨセフの人生の捉え方はもっと

身近でしょう。


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