1月13日
2002年1月13日

「新旧交代」

使徒言行録12:20-13:3


 ユダヤの王ヘロデ・アグリッパの悲劇的な死とアンティオキアの教会からバルナバ

とサウロを世界伝道に送り出したことと、この二つの出来事の間に、使徒言行録を大

きく二つに分ける構造線が走っています。前半はペトロを中心とするエルサレム教会

の働き、後半はアンティオキアの教会から出発したパウロを中心とする伝道旅行の記

事が続きます。新旧交代がここで起こっています。聖霊の働きは湖のように静かに動

かないものではありません。激しく流れ下る川のように、その働きによってみせる景

色は、時々に変わっていきます。聖霊に従って流れに身を任せていると、聖霊が起こ

す様々な出来事、興味深い景色に立ち会うことができます。

 それにしても、ルカはどうして、一見教会の発展と直接関係のないアグリッパの最

期を記録したのでしょう。得意の絶頂、人々がアグリッパの演説を聞いて、「神の声

だ。人間の声ではない」と叫んでいるのを制止することもなく、陶酔しているさなか

に、「主の天使がヘロデを打ち倒した」というのです。ユダヤの同時代の歴史家ヨセ

フスは、銀色の輝く衣をまとったアグリッパが、朝日の中に立つ姿の荘厳さに民衆が

圧倒されて、「これは神だ」と叫び、その直後に激しい痛みが心臓と胃を襲って、5

日間悶え苦しんだと伝えています。ヤコブを殺し、ペトロまで手をかけようとした神

の栄光をあらわそうとしない政治家ヘロデの権力の実態は、このようにもろくはかな

いものであった、そのような限界を明らかにするためでしょうか。いやむしろ、次の

まとめの言葉の中にこの前半の最後の出来事を包み込みたかったのではないでしょう

か。「神の言葉は、ますます成長し、広がって行った・・・。」教会の成長は、「神

の言葉」の成長として描かれ、その成長の中には、信者の数が増えていった、とか、

エルサレム、サマリア、ユダヤの全土、さらにアンティオキアへと数的・地理的に広

がって行くだけでなく、そのなかにはコルネリウスの回心の出来事もあり、またステ

ファノやヤコブの殉教の死もあり、そして迫害するアグリッパの死を目の当たりにす

るという経験もあることを伝えているのです。「教会の成長」というイメージを、わ

たしたちはどのようにとらえているでしょうか。わたしたちの母なる教会の成長は、

このような独特の光と影、高さと低さの経験の広がりを、神の言葉の成長と考え、聖

霊の働きが現実の中でもたらす多様さを、その枠組みの中にもっていると考えられる

のです。

 アンティオキアの教会からバルナバとサウロが立てられて、世界伝道に出ていくと

いう不思議な展開も、人間の思いの枠組みを越えた聖霊の自由な働きに促されたもの

です。ここには大胆な服従があります。


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