ルツ記3:1‐14a 使徒言行録16:6-15
ルツ記の物語は思わぬ方向に展開します。落ち穂拾いに行って袋一杯の大麦を持ち 帰ったルツを見たナオミは、それがボアズの畑で特別な好意にあずかった故であった ことを知って、喜びと驚きを隠しません。「その人はわたしたちの縁続きの人です。 わたしたちの家を絶やさないようにする責任のある人のひとりです」と告げます。こ の言葉が物語を展開する鍵です。ナオミが考えた幸せになる道は、わたしたちには思 いもつかない独特のユダヤの習慣に基づくものでした。ナオミはルツに美しく着飾っ て夜麦打ち場に寝ているボアズのもとに行き、「あの人が休む時、その場所を見届け ておいて、後でそばに行き、あの人の衣の裾で身を覆って横になりなさい」と勧める のです。何やら怪しいことになってきました。ルツはその勧めに従ってボアズのもと に行き、ボアズの傍らで寝ます。寒気を覚えて目覚めてルツに気づき、ボアズか驚い ていますと、「わたしはあなたのはした女のルツです。どうぞあなたの衣の裾を広げ てこのはした女を覆って下さい。あなたは家を絶やさぬ責任のある方です」と言いま す。驚くほど露骨なアッピール。しかし、この「家を絶やさぬ責任のある方」という 言葉、“ゴーエール”というへブル語の一語がこのルツの大胆な行動の意味を明らか にします。この言葉は、買い戻し、救出、解放を意味しますが、新約の「贖い」とい う重要な言葉の語源です。本人に代わって兄弟、親族の者が土地の買い戻し、奴隷か らの解放のために特別な義務と責任をはたす行為のことで、「血の復讐」(ゴーエー ル・ハッダーム)も親族の者の責任、また、ルツ記の場合のように、兄が死んで家族 の子孫がたえそうになる場合、弟が兄の嫁をめとって子孫を残すこともゴーエールに 含まれます。ルツはこのゴーエールの責任をボアズに担ってもらうようにするために、 ナオミの指示に従って大胆な行動に出たのです。主なる神は「贖い主、万軍の主」と 称えられますが、主の贖いを生み出すための大胆な献身の行為というべきでしょう。 ボアズの驚きと反応「今あなたが示した真心は、今までの真心よりまさっています。 わたしの娘よ心配しなくていい・・」これも、ボアズの主なる神の慈しみに感応する 信仰的な決断です。
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