5月2日
2010年5月2日

「 闇にひそむものを知る光 」

ダニエル書 2:1-24 コリントの信徒への手紙二 1:3-11


 バビロンにとらえ移されたダニエルには、夢を解き明かす力が与えられていたこと

から、不思議な物語が展開します。バビロンの王ネブカドネツァルが夢を見て眠れな

くなり、悩んでその解き明かしをバビロン中の占い師や魔術師などを呼んで求めます。

王は夢の解き明かしだけでなく、自分が見た夢そのものも言い当てなければならない、

と全く横暴な要求を突き付け、ついに、その国の賢者たちは皆殺しの憂き目に遭うと

いう危機を迎えることになりました。王のこの要求は、「王様のお求めになることは

難しく、これに応じることができるのは人間と住まいを共になさらぬ神々だけでござ

いましょう」との賢者の言葉も王の耳に届きません。

 人が見た夢を言い当て、その夢が何を意味するかを解き明かすことなど誰もできる

はずがない、という状況で、ダニエルが申し出ます。「しばらくの時をいただけます

なら、解釈いたします・・・。」ダニエルは家に帰り他のユダヤから来た友だちと神

に祈ります。すると、「夜の幻のうちにその秘密がダニエルに明かされた」というの

です。まるで夢のような話の展開です。

 どうして、このような不可能が可能になり、人間に閉ざされているはずの秘密が開

かれたものとなるのか、この秘密は、ダニエルが神を賛美する言葉の中に隠されてい

ます。ダニエルは王の夢が何であったかに思いをひそめる時、王を立てた神の支配、

神が王を立てられ、また倒される時があること、その支配のもとに人間である王は立

たされていることに思い至っているのです。その神の知恵と支配の光に照らして、王

の支配のもとにあるこの国の現実を考える時、王の夢と幻、すなわち、王の心の中に

ある闇、王自身がその正体をとらえきれない不安と恐怖の実態が見えてきたのです。

「神は時を移し、季節を変え、王を退け、王を立て・・・奥義と秘義を現わし、闇に

潜むものを知り、光はみもとに宿る」と。わたしたちが 日常的に直面させられる自

分と他者の心の闇、その闇がもたらす混沌に光を当て、出口を見出す道は、ダニエル

がたどった思考過程と同じです。彼の超能力によるのではなく、創造者なる神の義と

支配を信じつつ、その光のもとににある人間の歴史と心の本質を根底から考えるので

す。

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