5月23日
2010年5月23日

「 滅びることのない国 」

ダニエル書 2:44-49 マタイによる福音書 21:33-44


 バビロンの王ネブカデネツァルのみた夢を見事に言い当て、その解き明かしをした

ダニエルのまえに、王はひれ伏して「あなたたちの神はまことに神々の神、すべての

王の主」と称え、ダニエルを高い位につけました。物語はこのようなハッピーエンデ

ィングとなります。しかし、ちょっと変です。ダニエルが解き明かした王の夢は、王

の国は衰退し、ついに、一つの石が巨大な像を打ち壊して粉々にしたように、滅び去

って、天の神が興される一つの国が起こることを予告しているのです。その予告に、

ネブカデネツァルは唯々諾々と従い、ひれ伏すことなどあるでしょうか。そんな不吉

な予言をするイスラエルの若者の言葉に、実際のバビロン王が耳を傾けることがある

でしょうか。

 この物語は、夢を説く力のあるダニエルの成功物語に重点が置かれているのではな

く、この人の手によらないで切り出され、金と銀、青銅と鉄と陶土でできた巨大な像

に打ちかかり、粉々にした一つの石に、最も重いメッセージを託していることに気づ

かなければなりません。この一つの石、それは、天の神が興される国で、「永遠に滅

びることがなく、その主権は他の民の手に渡ることなく、すべての国を打ち滅ぼし、

永遠に続きます」と語られます。この石の出現にこそ、異国の支配と宗教弾圧にさら

されているイスラエルの人々が期待をかけたのです。ダニエルの夢解きは、そのよう

な希望をイスラエルの人々に与えるものでした。

 興味深いことに、福音書の中で主イエスは、ブドウ園の主人と農夫の譬

(マタイ21:44;ルカ20:17以下)の中で、家造りらの捨てた石が隅の親石

となったという言葉に次いで、「この石の上に落ちる者は誰でも打ち砕かれ、その石

が誰かの上に落ちかかれば、その人は押しつぶされてしまう」と語って、このダニエ

ルの預言にある「一つの石」の働きを、十字架にかけられて殺される主イエスご自身が

果たす役割と結び付けています。さらに、ペトロの手紙では、主イエスは、「神にと

って選ばれた、尊い、生きた石なのです。あなたがたも生きた石として用いられ、霊

的な家に造り上げられるようにしなさい」と語られます。この石の働きをめぐる展開

にこそ、神の歴史支配の不思議があります。

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