ダニエル書 3:1-18 ヘブライ人への手紙 12:1-13
旧約聖書の物語を学ぶシリーズの一環として、ダニエル書を続けて学びます。この 書は、イスラエルの民がバビロンに捕囚としてとらえ移された時代に、ダニエルやそ の他の若者が異国の地で信仰を貫いたことを記した物語部分と、終末の情景を描いた 「黙示文学」といわれる部分に分かれます。バビロン捕囚の時代に起こった出来事を 記したかたちになっていますが、もっと後の、2〜3BCのアンティオコス・エピフ ァネスによる支配の時代に起こったユダヤ教迫害時代の中で書かれたものと言われて います。旧約聖書と新約聖書の中間時代、律法主義やメシア信仰など、新約の理解に 欠かせない大切な要素がこの中には多く含まれています。 ダニエル書のカバー・ストリーは、バビロンへ捕囚として連行された王族と貴族の 中から選ばれた若者たち、ダニエルと他の3人が、ベルテシャザル、シャデラク、メ シャク、アベド・ネゴというバビロン人の名前をつけられ、「カルデヤ人の言葉と文 書を学ばせた」うえ、「宮廷の肉類と酒を毎日彼らに与え、三年間養成してから自分 に仕えさせることにした」と破格の待遇を与えられました。征服した国の民を暴力的 支配ではなく、同化するための極めて賢明な政策です。しかし、この青年たちは、 「宮廷の肉類や酒で自分を汚すまいと決心して」、野菜だけを食べることにし、「神 の御計らいによって、侍従長はダニエルに好意を示し」、その結果、「彼らの顔色と 健康は宮廷の食べ物を受けているどの少年よりも良かった」ということになりました。 絵にかいたような話ですが、この話を通してこれから展開する重要なテーマが示され ています。ダニエルをはじめとする若者たちは、異国の文化と宗教の中で、特別な厚 遇を受けてその中で生きることが圧倒的に有利な状況の中で、その中に同化してしま わない別のスタンダードをもって生きているのです。そのスタンダード、神の民とし て生きる者として、守り抜くべきものをもって生きている、その生き方はこの世にあ るキリスト者のあり方を深く考えさせてくれます。外の世界の基準とは別の内なる生 き方の基準をもって、それを貫いているのです。
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