ダニエル書 6:19-29 コリントの信徒への手紙二 6:1-10
ダレイオス王のもとで高い地位についたダニエルを陥れるために造られた、向こう 30日間、王以外の人や神に願い事をしてはならない、それを犯すものは獅子の洞窟 に投げいれられる、法律はその通り実行されました。しかし、いつもの通りエルサレ ムに向かって日に三度の祈りをささげたダニエルは、翌朝には何の傷を受けることな く、獅子の穴から救出されました。主なる神が御使いを遣わして獅子の口を閉ざして くださったのです。 この一件で誰よりも動揺し、うろたえたのは、ほかならぬダレイオス王その人でし た。臣下の悪意に気づかず、心ならずも禁令に署名をしてしまったことから、何とか してダニエルを助ける方法はないかと悩み、何の手だてもないとなると、「お前がい つも拝んでいる神がお前を救ってくださるように」と、ダニエルの神に望みを託しま す。そして、「王は宮殿に帰ったが、その夜は食を断ち、側女も近寄らせず、眠れず に過ごし、夜が明けるやいなや、急いで洞窟に行く」と、まるで家族の処刑を心配し ているような様を呈しています。この王は、良心を持つ人間として、自らが署名した 禁令が無実の者の命を奪うことになったことについて、王国の権威や秩序を保つため の道具の位置に自らを貼りつかせることができないのです。ダレイオス王のこの一夜 の過ごし方は多くの支配者のふるまいを考えると異例のことと言えるでしょう。獅子 の洞窟に向かって呼びかけている言葉、「生ける神の僕ダニエルよ。・・・お前の神 はライオンから救うことが出来たか」は、眠れぬ夜を過ごした王の心の成長を物語っ ています。生きた神を信じ、生きた神との交わりに生きる信仰者の生きた姿に触れた 王が、もはや、ダニエルの神として向こうにいる神にではなく、わたしの神として、 神との生きた交わりに望みと祈りを託している様を見ます。王は、ダニエルを獅子の 穴から救出すると、王国全域においてダニエルの神を恐れかしこむようにとの勅令を 出しますが、そこには、「この神は生ける神、世々にいまし、その主権は滅びること なく、その支配は永遠、この神は救い主、助け主、天にも地にも不思議な御業を行い ・・・」と自らの信仰を告白しているのです。生ける神の交わりに自ら入っているの です。
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