ダニエル書 7:1-14 ヨハネの黙示録 15:1-7
ダニエル書は7章からダニエル自身が見た幻の話が続きます。ダニエル書の黙示録 と言われる部分で、不思議な情景が語られます。7章では、天の四方から風が起こり、 波立つ海から4つの凶暴な生き物が立ち現われる幻です。創世記の初めに原始の混沌 の海、激しい風が暗闇の中を吹き荒れている世界に「光あれ」の一声があって、そこ から秩序ある世界が造り出されていったのとは全く違う世界の情景が語られているの です。理性と知恵によって導かれて、秩序あるものであるはずの私たちの世界が、何 か暗い力によって混沌たる凶暴な獣のようなものによって支配されていると感じる暗 い予感は、世界の歴史を知る者には誰でもどこか共感できるものがあります。ダニエ ル書が、獅子のような生き物、熊、豹、そして最後には名前もわからないようなただ ただ恐ろしく、強く、巨大な鉄の歯を持って食いちらし足で踏みにじり、尊大な言葉 を語る生き物として描いているのは、バビロン、メディア、ペルシャ、そして、アン ティオコス・エピファネスが君臨しているギリシャという6〜2BCにイスラエルの 民を支配していた国々のことを指すといわれていますが、人間が人間を支配する情景 は、どの時代にあっても、これらの4つの生き物にたとえられるような無秩序と混沌 の記憶を刻みつけています。 しかし、ダニエルの幻は、混沌の海から立ちあがる4つの凶暴な生き物によって次々 に支配される時は、裁かれ、終わりが来ることをはっきりと指し示します。その終わ りの情景は不思議な表象と共に語られます。『日の老いたるもの』の王座が据えられ、 「その衣は雪のように白く、その白髪は清らかな羊の毛のよう、その王座は燃える炎、 その車輪は燃える火」といった視覚に映る姿、その方の裁きによって獣の権力は打倒 され滅ぼされるというのです。それに加えて、さらに、『人の子のような者』が天の 雲に乗って『日の老いたるもの』の前に来ると、その方に「権威、威光、王権」は委ね られ、すべての民が仕えることとになったと語られるのです。「人の子」という言葉 は、主イエスが自身を指す言葉として使われた言葉ですが、ここにその言葉の起源を 見出すことができます。特に、受難の予告と共に使われたのです。
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