ダニエル書 7:15-28 ヨハネの黙示録 7:9-17
ダニエルが見た幻、4つの凶暴な生き物の出現と、それらが『日の老いたるもの』 によって裁かれ、天の雲に乗って来た『人の子のような者』にすべての権威や支配が 委ねられる終局、その幻について仲介者の解明が続きます。しかし、この解明は、幻 の中で最も中心にある『日の老いたる者』や『人の子のような者』については語られ ません。この部分では、主として、第4の獣、鉄の歯を持ってすべてをかみ砕き、足 で踏みにじる名も知れない恐ろしい獣のことで、「彼はいと高き方に敵対して語り、 いと高き方の聖者らを悩ます。彼は時と法を変えようとたくらむ」、そのように世界 を支配する王のことです。しかし、『日の老いたる者』が進み出て裁きを行うと、い と高き者の聖者らが勝利を得て、「天下の全王国の王権、権威、支配の力は、いと高 きものの聖なる民に与えられ、その国はとこしえに続く」ということになります。 「日の老いたる者」は「いと高き方」になり、「人の子のような者」は「いと高き方 の聖者ら」、あるいは、「いと高き方の聖なる民」と微妙に表現が変わっています。 前半の幻と後半の解明の微妙なずれについては、立ち入りませんが、ここで語られる 第4の凶暴な獣の所業は、BC2Cのアンティオコス・エピファネスによる支配のも とで苦しむユダヤの民の経験を示しています。エルサレム神殿はゼウス・オリンポス 宮と呼ばせ、一切の祭儀を行うことは禁じられ、神殿娼婦と戯れる異邦人らの乱痴気 騒ぎが常態化し、安息日を守ることは禁じられ、ひそかに礼拝しているものは捕えら れて焼き殺されると言ったようなことがありました。「彼は法と時を変えようとたく らんだ」と語られていることはそのような圧政の現実をあらわしています。しかし、 ここで告げられていることは、そのような時は必ず終わる、ということ、しかも、定 められた時を経て終わり、その後に忍耐して信仰を貫いたものの支配の時が来る、と いう希望の使信です。いと高き方の聖なる民は、未だ見ることのない世界を見て希望 を捨てないのです。この幻は、聖なる民がすべての民の上に立ち従えることを示しま すが、ヨハネの黙示録はすべての民と共に、御座と小羊の前で声をそろえて神を賛美 する時を究極の時と見ています。
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