9月5日
2010年9月5日

「 時を知る者として 」

ダニエル書 8:1-14 ローマの信徒への手紙 13:11-14


 また、ダニエルの見た幻の話です。二本の角を持った雄羊、勢力を伸ばし、何もの

もこれに立ち向かうことができない、これはペルシャやメディアの興隆の姿を象徴し

ています。次に現れた雄山羊、「全地を飛ぶような勢いで進んできた」という激しい

勢いで、先の雄羊を打倒し、全地を席巻しますが、「力の極みで角は折れ、その代わ

りに四本の際立った角が生えて、天の四方に向った」と表現されています。これはア

レキサンダー大王とその部下の武将たちに分割されたヘレニズムの時代の世界支配者

の興亡のことを描いています。「その中から一本の小さな角が生え出て、非常に強大

になった」と語られ、この角が天の万軍にまで手を伸ばし、祭儀を廃止し、聖所を破

壊し、荒廃をもたらす最も凶悪なものとして描かれているのは、アンティオコス・エ

ピファネスによるユダヤ人抑圧政策のことをあらわしており、これがダニエル書が書

かれている時代の現実です。「真理を地に投げ打ち、思うままにふるまった」という

表現にユダヤの人々の深い苦悩を読み取ることができます。しかし、この幻のクライ

マックスは、天の万軍の長、すなわち真の神にまで手を伸ばし、思うままに傲慢にふ

るまう雄山羊の角の支配は、その終わりの時が定められているということが明示され

ているところです。「日が暮れ夜の明けること2千3百回に及んで、聖所はあるべき

状態に戻る」、すなわち、3年半の間にこの圧政に終わりが来る、というのです。

 ダニエルの幻は、一瞬にして過ぎ去る夢や幻ではありません。また、彼自身の心理

の深層をあらわすものでもなく、神が人間の歴史支配と、これから実現しようとして

いる計画の表れです。この計画の中で、現在の苦境の意味やその期限が明らかにされ、

絶望に思える状況にも希望をもって生きることへと促されているのです。このような

歴史のとらえ方は、私たちが常識的に歴史から学ぶ仕方とは違っています。過去の経

験から何かを学ぶというより、まだ見ていない未聞のことから、すなわち、神の啓示

から時を知って生きる生き方です。ここに独特の聖書的な信仰による生き方が示され

ています。「あなたがたは、今がどんなときであるかを知っています」とパウロが勧

める生き方です。

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