ダニエル書 10:1-11:1 ルカによる福音書 1:5-20
ダニエル書10章〜12章は、これから起こるべきことについて、幻の中に現れた天使 ガブリエルから解き明かされます。内容はこれまで語られたことと同じで「荒らす憎 むべきもの」の支配と、その時代の終焉のことですが、これまで以上に詳細にアンテ ィオコス・エピファネスの時代の弾圧にいたる歴史が暗号的な言葉で記されています。 10章はその導入部分で、天使ガブリエルの幻に出会う情景、ダニエルの驚きとガブ リエルの「恐れるな」との励ましが語られています。その言葉の間から、人が神から の啓示に接するということがどういうことであるかを教えられます。 ダニエルはチグリス川のほとりで祈っている時、幻の中でこの世のものとも思えぬ 輝きと力強さ、美しさを持った人に出会い、一緒にいた仲間は逃げ去りますが、ダニ エルは朦朧となりながら地に倒れ伏します。この人に手を取って引き起こされること によってやっと立ち上がり、これから起こるべきことについて聞くことになります。 わたしたちは人と出会い、その人がどんな人かを判断する時、それまでに他の人と出 会った経験や人間についての知識をもとに相手を見ます。自分の理性的な力、観察力 によって対等の人格関係において出会うのです。しかし、この場合は違います。圧倒 的な輝きや権威によって、こちらの側の理解力や先入観など全く透明化されて、一方 的に向こうから語られることを映し出すだけの存在になるのです。パウロがダマスコ 途上で経験した主イエスの語りかけもそのようなものであったでしょう。 しかし、このような驚きや感動が啓示の中心ではありません。「一つの手がわたし に触れて引き起こし、立ちあがらせ、『神に愛されし者よ』と呼びかけられ、『恐れ るな、あなたの祈りは聞かれた』と語りかけられる」、このようにして、あえて対話 の相手として引き上げられる経験、さらに、ダニエルは天使ガブリエルにこれから起 こるべきことを告げられると、再び倒れ伏してしまいますが、ここでも再び、「恐れ ることはない。神に愛されし者よ。平和を取り戻し、しっかりしなさい」との語りか けを聞きます。神の啓示に触れ、神の時を知り、その言葉から生きることは、まさに そのような語りかけの連続によって可能になることです。
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