エゼキエル書 1:26-2:10 ; ヘブライ人への手紙 1:1-4
ヘブライ人への手紙の表題は、後からつけられたもので、元来は誰によって書か れ、どのような読者に向かって書かれたものであるかは分かっていません。ヘブラ イ人に対してというより、1世紀後半のユダヤ教から独立した歩みを始めているキ リスト教について、その独自性を確認したいと願っている第二世代のキリスト者を 励ますために書かれた書物です。著者についても、はっきりしません。内容からし て確かなことは、極めて高いギリシャ語能力を持ち、豊富な語彙とレトリックを駆 使し、深い旧約の祭儀と信仰に対する知識との理解者、正統的な使徒的信仰に立っ た人、深い信仰的パトスの持ち主であることは間違いありません。 この書の序章が、1節から4節の短い言葉ですが、この荘重な短い文書の中に、 これから展開しようとしている内容が見事に要約されています。「神は、かつて預 言者たちによって、多くのかたちで、また多くのしかたで先祖に語られたが、この 終わりの時代には、御子によってわたしたちに語られました。」ここには、今「わ たしたち」に語り伝えられている神の御子、イエス・キリストの福音こそ、神の啓 示の最終・究極のもの、という主張があります。それとともに、預言者たちの言葉 は、御子による究極の救いのための道備えだという認識が明らかにされているので す。まさにこの二つのことがこの書全体で展開され、旧約聖書の信仰と祭儀のあり 方とイエス・キリストによって始められた信仰との対比が随所に現れます。天使、 安息日、モーセ、大祭司、聖所(幕屋)等、「旧い契約のもとでの信仰のかたち」 とイエス・キリストによる「新しい信仰のかたち」が対比され、わたしたちが立っ ている信仰が何かを明らかに示しているのです。次に語られるのは、神の御子イエ ス・キリストはどのような方であるかについての言い表しです。「神は、(1)こ の御子を万物の相続者と定め、また、(2)御子によって世界を創造されました。 (3)御子は、神の栄光の反映であり、(4)神の本質の完全な現れであって、 (5)万物をご自分の力ある言葉によって支えておられますが、(6)人々の罪を 清められた後、(7)天の高いところにおられる大いなる方の右の座におつきにな りました。」ここから、イエス・キリストとは誰かの秘密が解き明かされます。
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