詩篇 110:1-7 ; ヘブライ人への手紙 1:10-2:4
ヘブライ人への手紙の初めは、旧約聖書からの7つの聖句を引用して天使と御子 との対比をし、御子の優位性が論証されます。ここで引用される聖句はすべて、人 となりわたしたちと同じ苦しみを味わった主イエスではなく、歴史を超えたキリス ト、永遠でいます神の御子であるキリストです。これらの旧約の言葉が、歴史のイ エスと信仰のキリストをつなぐ要の言葉となり、信仰を形成するに至っていること に気づかされます。 引用句の6番目と7番目は特に重要です。詩篇102:25〜27と110:1か らの引用ですが、その引用の仕方は特別で、変わっています。詩篇102編では 「主よ、あなたは初めに大地の基を据えた。もろもろの天は、あなたの手の業であ る。これらのものは、やがて滅びる。だが、あなたはいつまでも生きている」とい う言葉で、主イエスこそ神の御子であって、天地の創造者であり、永遠の方である ことを証しする言葉として用いられています。この詩篇全体は、悩みと苦難の中に いる詩人が神に向って嘆き祈る詩で、すべてを喪失し、死に定められているような 境涯から、神が祈りを聞いて助けてくださる経験をした詩人が、そのように助けて くださる神とはどのようなお方か、神認識の深まりにおいて語り出されるのが引用 されている箇所です。そこでは、一時的に祈るものが都合のよいときに助けてくだ さる親切なお父さんの様な方という認識をはるかに超えて、天と地を造り永遠でい ましたもうお方がわたしたちの神なのだという認識です。 詩篇110編は、「わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまで、わたしの右 に座っていなさい」という言葉で、このようなことは天使の誰にも語られていない ことを論証するために引用されています。この聖句は、新約聖書で最も多く引用さ れる旧約の聖句(18回)で、後のニケヤ信条や使徒信条の中にも、この言葉に従 って、主イエス・キリストが十字架の死の後復活して天に昇り、再び来られるとき まで権威ある座についておられることを告白しています。この詩そのものは、ダビ デ家の王が即位する時の即位式のために作られた詩と言われています。その中の言 葉からインスピレーションが広がって、キリストの権威を証しする言葉となってい るのです。言葉の連鎖作用の不思議さを感じます。
秋山牧師の説教集インデックスへ戻る