エレミヤ書31:21-30 ; ヘブライ人への手紙8:7-13
主イエス・キリストは、メルキゼデクに等しい大祭司として、人間の中から選ば れた大祭司より「はるかに優れた務め」を果たす、「更にまさった約束」に基づい て制定された、「更にまさった契約の仲介者となられた」、と、ヘブライ人への手 紙の著者は、わたしたちの主イエス・キリストがいかに優れた働きをする方である かを強調します。議論は、さらに、「更にまさった契約の仲介者」をめぐって進展 します。仲介者には二つの役割があると言われます。二つのグループ間の対立と不 和を取り除き、共通の目標を達成する働きと、合意が破られた場合にはその損害、 痛みを保証し引き受けるという役割です。主イエス・キリストは、旧約の大祭司が 雄牛や雄山羊の血によって償いの働きをしたのに対して、御自身の血を注ぐことに よって神と人との間に和解をもたらした方として、「はるかに優れた務め」を果た されました。ヘブライ人への手紙では、これを、「新しい契約」が結ばれる日が来 る、と預言した旧約の預言者エレミヤの預言の実現と捉えているのです。 エレミヤの「新しい契約」についての預言は、新約聖書では、福音書も、またパ ウロも、主イエスによって実現したことと捉えて、数多く引用しています。古い契 約、すなわち、出エジプトの時にシナイ山でモーセによって伝えられた律法は、民 の不従順のためにその機能を果たすことができず、廃棄されるべきものでした。こ れに代わる新しい契約は、(a)「わたしの律法を彼らの思いにおき、彼らの心に それを書きつけよう」と言われるように、外からの強制や押し付けによって無理に 戒めに従わせるのではなく、自由に、心から、喜んで従うことができる契約、(b) もはや同胞に、「主を知れ」という必要はなく、誰の心にも共通の主に従う思いが 刻まれて「小さなものから大きなものに至るまで、彼らはすべてわたしを知るよう になる」、このような普遍性をもつ契約、(c)この新しい契約は、神の側が「わ たしは不義を赦し、もはや彼らの罪を思いだしはしない」というように、罪の赦し によって立てられる契約です。主イエス・キリストは、まさに、「新しい契約」の 仲介者として、その生涯を貫く愛の業、その死を通してまっとうされた、罪の贖い と執り成し、赦しと解放を実現されました。主ご自身が、その保証、担保となって 下さったのです。
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