イザヤ書 55:1-7 ; ヘブライ人への手紙 13:18-25
ヘブライ人への手紙の最後は、手紙の最後として付記することや挨拶のほかに、 よく礼拝の最後に祈られる有名な祝福の祈りがあります。「永遠の契約の血による 羊の大牧者、わたしたちの主イエスを死者の中から引き上げられた平和の神が、御 心に適うことをイエス・キリストによってわたしたちにしてくださり、御心を行う ために、すべての良いものをあなたがたに備えてくださるように。栄光が世々限り なくキリストにありますように」という荘重な祈りです。よく耳にする祈りではあ りますが、何が祈られているかについて心に留めることなく聞き流してしまうこと が多いのではないでしょうか。この祈りにはキリスト教の祈りのエッセンスが込め られていて、わたしたちの祈りの本質が何かを教えられます。 まずこの祝福の祈りによって気付かされることは、わたしたちが祈るべき対象で ある神の内に交わりがあり、また、祈りによって「わたしたち」と「あなたがた」 の交わりがある、このような対話の構造の中で祈りが展開されているということで す。神の中の交わりは、神とキリストの交わりです。神は平和の神であり、キリス トを死者の中から引き上げられたその命の力と愛をもって、すべての良いものをわ たしたちに、また、あなたがたに備えてくださると期待されています。キリストは、 死者の中から引き上げられた方であり、十字架を通して成就された永遠の契約に血 によって、羊たちの大牧者になった方です。このキリストによって、わたしたちに も、またあなたがたにも、御心に適うすべての良いことが備えられることになりま す。神は「平和の神」です。遠くにあって世界が平和であること願いつつ静観する神 ではなく、イエス・キリストにおいてわたしたちの罪を処断し、御子を死者の中か ら引き上げられ、和解をもたらす神です。神の本質そのものが平和であるのです。 主イエス・キリストは大牧者、すなわち大いなる羊飼いです。良い羊飼いは「羊の 為に命を捨てる」、「良い羊飼いは羊のことを良く知っている。ひとりひとり名を 呼んで連れ出す」と教えられました。この神とキリストの交わりと働きによって、 わたしたちにも、またあなたがたにも、神に至る新しい生きた道が開かれ、この世 に生きる間すべての良いものが備えられるのです。このようにして、真の平和がわ たしたちにもたらされます。
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