9月29日
2013年9月29日

「 銀はすべてにこたえてくれる 」

コヘレトの言葉 10:16-20 ; ルカによる福音書 16:19-31


コヘレトは宮廷生活の倫理を説きます。「王が召使のようで、役人たちが朝から食い

散らしている国」、これは不幸な国、「王が高貴な出で、役人らがしかるべき時に食

事をし、決して酔わずに力に満ちている国」、これは幸福な国の象徴だと。要するに、

王の権威が確立して内部統制がよく取れている国と、逆に上が弱体で、指揮官や役人

たちが勝手気ままにふるまい、朝から酒色にふけって、それを糺す者もいない国、国

の幸・不幸は、役人たちの食事の仕方。酒の飲み方によって分かれるというユニーク

な判断基準が語られます。わたしたちの社会の状況を判断するのにも使えそうな見方

です。ところが、その後のほうでは、「食事をするのは笑うため、酒は人生を楽しむ

ため、銀はすべてにこたえてくれる」と、「酒や食事を楽しむことこそ人生だ」と、

酒場の壁にかかっているようなモットーが語られています。酒色にふける役人たちを

揶揄しているとも取れますが、それにしても、「銀はすべてにこたえてくれる」とい

う言葉が聖書にあることは驚きです。聖書が語る中心メッセージとは逆のことが語ら

れています。前にはコヘレトは「銀を愛する者は銀に飽くことはなく、富を愛する者

は収益に満足しない」と語っていましたが、ここではお金の現実的な力を頼りにして

います。金や富よりももっと大切なものがある、「銀よりもわたしの諭しを受け入れ、

精選された金よりも知識を求めよ」とか、「富に依存する者は倒れる。神に従う人は

木の葉のように茂る」と知恵の言葉は語ります(箴言8:10;11:28)。新約の

メッセージも、金と富に兼ね仕えることはできない、とか、金や富よっては得ること

ができない命を求めるように勧めます。その大きな流れの中で、「銀はすべてにこた

えてくれる」と、現代人の感覚に全くフィットするような言葉が語られているのです。

 コヘレトの言葉は、天からの声、わたしたちの霊を呼び覚まし、神の愛と真理に心

を燃え立たせられるような言葉ではありません。罪の支配する中でこの世を生き抜く

ための現実認識です。何を食べようか、何を飲もうかと思い悩むな、野の花を見よ、

空の鳥を見よ、まず神の国と神の義を求めよ、この主イエスの天からの声を魂の深み

に聞くまでの地からの声です。


秋山牧師の説教集インデックスへ戻る

上尾合同教会のホ−ムペ−ジへ戻る