10月6日
2013年10月6日

「 あなたのパンを水に流せ 」

コヘレトの言葉 11:1-6 ; マタイによる福音書 6:19-21


「あなたのパンを水に流すがよい。月日が経ってからそれを見出すだろう。」このよ

く聞かれる格言の解釈は主として3つあります。1)施しを進んでするよ」にとの勧

め、2)海を越えて危険を冒してでも商売をすることの勧め、3)一見無駄で無意味

な行為であっても後になって思わぬ結果になって返ってくることがあるので、労苦を

惜しまないようにとの勧めと、聞く人によってさまざまなとらえ方がされます。パン

を水に流すということは、確かに無駄な行為ですが、いつかは自分を養ってくれるこ

とになる、ということですから、これは福音を伝達する働きにしても、隣人を愛する

働きにしても、徒労と思えることを希望をもって誠実に取り組むようにと励まされま

す。

「7人と、8人とすら分かち合っておけ。国にどのようなことが起こるか分かったも

のではない。」ここには「自分の分を」という客語が省かれています。自分のもので

ある報酬、賜物、割り当てを独り占めしないで多くの人と分け合っておけば、危機に

直面した時にはまたそれが自分に返ってくる、ということです、社会保険の基本理念。

英語の “Don’t put all your eggs in your basket”という諺と同じ意味です。

「黒雲が一杯になれば雨が降る。木が南に倒れ、北に倒れれば、木はそのままそこに

ある。風を気にしていれば蒔くことはできず、黒雲を気にしていれば刈り取ることは

できない。あなたはどのようにしても母の胎内の骨に霊が入り込むか、その道を知る

ことはできないのと同様、すべてのものを造られた神の業を完全に知ることはできな

い。」これはなるようにしかならないという意味にも取れますが、人には知りうるこ

とと知りえない神の領域があることを示して、「朝、種を蒔け、夜にも手を休めるな、

実を結ぶのはあれかこれか、それとも両方なのか分からないのだから」と、朝も夜も

手を抜くことなく精一杯に働くようにと励まします。要するに、結果を先読みしてど

うせ何もできないとあきらめるのではなく、今出来うる限りのことをせよとの教えで

す。すべては空しいと感じるこの世にあっても、自暴自棄に陥り自己破壊的に生きる

のではなく、積極的、健康的に生きる生き方が示されます。その動機付けは、無償の

愛に根差すのではなく、結局は自分に返ってくるということで、功利的な地上の論理、

この世の倫理です。


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