コヘレトの言葉 12:1-8 ; コリントの信徒への手紙二 4:16-18
「青春の日々にこそ、お前の創造主に心を留めよ」、これは若者の生き方について戒 めるよく知られた言葉です。「若い」という言葉のヘブライ語の語源は「選ぶ」とい う動詞の派生語ですので、青春の日々、これからの生涯を送るにあたって何を選択の 基準とし、どのような方向で生きるべきか、その基本を教えます。「身体髪膚これを 父母に受く。あえて毀傷せざるは孝の始めなり」と孔子は教えますが、聖書はさらに 根本的に、父母を超えて創造主を覚えることが肝心だと教えます。 創造主を心に留めるということは、わたしたちの命をその細部にいたるまで形作り、 いのちの息を吹き込み、いのちが命あるものとして生きるようにして下さったばかり でなく、大地を、光を、空気を、水を、植物を、動物を造り、地球環境と仲間の人間 を造って、命が命あるものとして生きることができるようにしてくださった方に心を 留めることです。創造者の創造目的が何かを知ること、それぞれに創造世界の中で与 えられている役割と責任を知ることが、空しい人生を送る中で最も大切だ、というの です。創造の初め、神が人を造られたとき、人には他の被造物と違って特別な役割が 与えられました。神が造られたものを治める、という責任と、神に言葉をもって応答 するものとなる、神との特別な交わりを持つということです。これが人間を人間らし くすることで、この責任を果たすことによって、いのちの祝福があり、太陽は闇に変 わり、月や星が光を失うようななかでも生き抜いてゆくことができる、と。 若い日に造り主をおぼえることの大切さを強調するために、一見何の事かと思うよ うな喩をもって、若い日の対極にある老いの日々とはどのような日々かがユーモラス に、また、シニカルに描き出されます。「家を守る者、力ある男は衰え」は、足や腕 の力が衰えること、「粉を引く女の数は減って失われ」歯がなくなってゆくこと、 「アーモンドの花は咲き」は、白髪になってゆくこと、「白金の糸は絶たれ、黄金の 鉢は砕ける」は命の命脈が絶たれること、こうして「塵はもとの大地に帰り、霊は与 え主である神に帰る、つまり、死を迎えるのです。
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