イザヤ書 1:10-17 マタイによる福音書 16:13-20
『ハイデルベルク信仰問答』 問い83:「鍵の務めとは何のことですか?」 答え:「聖なる福音の説教とキリスト教的な戒規のことです。これらの二つによって、 天国は信じる者に開かれ、また、信じない者には閉ざされるのです。」 「ハイデルベルク信仰問答」の学びは、聖晩餐の学びから発展してキリスト教会の戒 規の独特の考え方と習慣についての解説に至ります。教会共同体が独裁や個々バラバ ラの集団に陥らないために、信仰告白があり教憲・教規規則があり、教会規則があり ます。また、違反者に対する罰則規定があります。これを「戒規」といい、また『鍵 の務め』と呼びます。しかし、信仰は個々の自由であり、また、キリストの教えに従 うならば、人を裁いてはならないはずの教会の中にどうして罰則規定があるのか、矛 盾しているようにも思えます。ここで教会の独特の考え方、信仰共同体が行ってきた 仕方があるのです。教会が教会としてのコンプライアンスを確保する鍵は、要するに、 御言葉の説教と主の食卓を汚すことがないように、主の食卓から遠ざけること、陪餐 停止にするという仕方です。これを「鍵の務めを果たす」という独特の呼び方をしま す。 この言葉は、マタイによる福音書16:19と18:18の二ヶ所で主イエスが語られた言葉 に由来します16:19では、ペトロが主イエスに「あなたはメシア、生ける神の子です」 と信仰を告白した時、「わたしはこの岩の上に教会を建てる」と語られ、「わたしは あなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。 あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる」と語られました。主イエスをキリス トと告白する正しい信仰を証しすること、(まさに、このことが説教の目的であり、 果すべき務めです)、これが天国の門を開く鍵であることが明らかにされています。 18:18は、ペトロだけでなく「あなたがたに授ける」と使徒たちにその鍵の権能を与 えています。そこでは、「兄弟の中であなたがたに対して罪を犯した者」について、 これを性急に断罪しないで、初め二人だけのところで、次に2,3人の証人と共に、 それでも聞き入れない時は教会に訴えるようにとの、扱いが示されています。違反者 を正しい道に引き返すように促す鍵は、キリストの愛に基づき、主が与えてくださっ たその体と血の重みに気づかせることなのです。
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