5月14日
2017年5月14日

「安心して行きなさい」

サムエル記上 1:1-20 フィリピの信徒への手紙 4:4-7


 旧約聖書の中に母の日に覚えるにふさわしい物語があります。ユダヤの最初の王サ

ウルやダビデに油を注いだ偉大な預言者サムエルの出生物語です。一人の命が生まれ

育つために一人一人ドラマがあり、母の祈りがありますが、サムエルの母ハンナの祈

りに注目しましょう。

 エフライムの山地に暮らしていたエルカナと言う人にハンナとペニンナという二人

の妻がいて、ペニンナには男の子や女の子ができたのに、ハンナには一人の子どもも

できなくて、つらく悲しい思いをしていたところから物語は始まります。「エルカナ

はハンナを愛していたが、主はハンナの胎を閉ざしておられた」というのです。特に、

ハンナがつらく悲しい思いをするのは一年に一度家族みんなでシロの神殿に礼拝に行

くときでした。エルカナは妻と子供たちに献げ物の分けを与える時でした。ペニンナ

の方には子供の分も加えて沢山の分け前が与えられるのに、ハンナの方はいつも一つ

だけ。そんな時に限ってもう一人の妻ペニンナはハンナに対して敵対心を燃やして辱

め、つらく当たったのです。そんな孤独と悩みの中で、ハンナの祈りがあります。

「ハンナは悩み嘆いて主に祈り、激しく泣いた」とあります。主の前に魂を注ぎ出し

て祈ったハンナの祈りは次のような祈りでした。

「万軍の主よ。はしための苦しみを御覧下さい。はしために御心を留め、忘れること

なく男の子をお授けくださいますなら、その子の一生を主に御ささげし、その子の頭

には決して剃刀を当てません。」子どもが授からない母親の必至の祈りですが、この

祈りの中で注目すべき二つの点があります。それは、ハンナは自分の事を「あなたの

はしため」と3度も言っていること(日本語の訳では2度だけですが)です。深い悩みの

中から子どもを授けてくださいと祈る祈りは多くの人が経験する祈りでしょうが、そ

のような祈りをする「わたし」をどの位置に置いているかが問題です。ハンナは、飽

くまで「あなたのはしため」つまり主の御心のままにどんなことでも従う人の位置に

おいているのです。また、自分に子どもを育てる喜びと充足を与えてください、とか、

こどもの産めないわたしへのはずかしめや悩みを取り除いてくださいと祈るのではな

く、男の子を授けてくださいというその目的は、主の御用をする子供の母となるよう

に、わたしをお用いください、という祈りになっています。このような心砕かれた祈

りを口にするようになるまでにどんな心の遍歴があったか、思いめぐらされます。

 シロの祭司エリはハンナの祈る姿を見て酒に酔っていると誤解したほどでしたが、

実情を聞いて「安心して行きなさい」と主が確かにその祈りを聞いてくださることを

受け合いました。


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