バビロンの王ネブカドネツァルは、捕囚の民の中から、家柄もよく、健康で美しく、
才能と知恵に恵まれた優れた少年たちを選び出し、自分に仕える人材に育てようとし
ました。この中にダニエル、ハナンヤ、ミシャエル、アザルヤの4人がいました。興
味深いことに、ダニエルたちは密かに肉と酒を拒み、野菜と水だけを食します。それ
は彼らがバビロンの宮廷にあっても、神の民として生きようとしたあらわれです。彼
らはこの世の巨大な権力の下におかれ、不自由で不安定な身の上でした。しかしすべ
てを支配しておられるのは神さまだけですから、彼らはぎりぎりの状況の中で、何と
かしてこの方にのみ従おうとしたのです。
神さまの御手は、ダニエルたちの上に確かに伸ばされていました。それゆえ三年後、
王のそばで仕えるようになったのは、毎日肉や酒で養われた少年たちではなく、野菜
と水しか口にしなかったダニエルたちでした。しかも神さまがダニエルたちにお与え
になった知恵と理解力のゆえに、王は彼らを頼りにするようになったのです。
ダニエルたちは、捕囚の困難の中に生きる、若き信仰者たちの姿です。バビロンの
宮廷の中で彼らは圧倒的な少数者でした。周りに神さまを信じる者はほとんどいませ
ん。神さまを信じ続けられる環境もほとんど整っていません。それでも彼らは信仰を
持ち続け、神の民の一員として生きようとしました。このダニエルたちの様子は、わ
たしたちの信仰共同体の若い世代、信仰を継承する次世代の姿に重なります。
わたしたちも先達から福音のバトンを引き継ぎ、それを次の世代に渡そうとしてい
ます。しかしこの世には、信仰者を神さまから引き離そうとする力が、そこかしこで
うごめいています。それらは肉と酒のように、大変魅力的で、抵抗しがたく、日々少
しずつ心身を侵食することも少なくありません。けれども、神さまは今日もそっとわ
たしたちの若きダニエルたち、幼きダニエルたちを育てておられます。ほとんどだれ
にも気づかれない、ごくごくささやかな仕方で、けれどもアイデンティティーに深く
関わる仕方で、神さまは今日も彼らに寄り添い、ひとりひとりを育ててくださってい
ます。神さまの御業は、いつでも人間の思いをはるかにこえて成し遂げられるのです。
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