ルカによる福音書1:1-4
ルカによる福音書の連続講解説教をはじめます。この福音書は、他の福音書の書 き出しと違って、ルカはテオフィロという人に献呈文を書いて序文としていますが、 そこに執筆の意図や目的が記されています。そこにいくつかの注目すべきところが あります。 まず、ルカは「わたしたちの間で実現した事柄について、最初から目撃してみ言 葉のために働いた人々がわたしたちに伝えたとおりに、物語を書き連ねた」人がす でにいることを明らかにしています。ルカは福音書を書いた最初の人ではありませ ん。たしかに、彼はマルコによる福音書に従ってこの構造を定めていますし、マタ イによる福音書と共通する物語やイエスの語録を知っています。しかし、彼以前に 書かれた福音書に完全に満足していません。「わたしもすべてのことからはじめか ら詳しく調べておりますので。順序正しく書いたあなたに献呈するのがよいと思い ました」というのです。わたしたちはこの福音書を読むとき、テオフィロのような 人にも主イエスとその生と死の意義を理解して確信を深くしてもらうための物語と はどのようなことであったか、この著者を促しているものが何なのかを探し求めつ つ読むように招かれています。 また、ルカは他の福音書にまして、イエスという人物の生と死、復活を通してさ まざまな人と出会うときに広がる世界の物語にわたしたちを招きたいと思っている ことは確かです。「マタイは教え、ルカは物語る」といわれますが、それはそのと おりで、マタイは山上の説教や奇跡について語るとき、旧約の言葉と結びつけてイ エスの行為の意味について解説します。ルカはおびただしい数のイエスの物語、た とえ話を収録して、イエスがおられる世界はどのように生きて動いているのかを示 そうとします。一回限りの歴史的な出来事を、その場に立ち会った人々に驚き、感 動し、疑い、劇場に駆られ、信じる、そのダイナミックスを伝えようとしているの です。 ルカによる福音書を連続して学ぶことは、このような物語の世界にまねかれ、わ たしたちもその物語の世界の一人になって、イエスのおられることを体験し、その 生と死、復活の出来事に触れつつ、イエス・キリストを通して実現されたことが、 まさにわたしたちに命をもたらし、神の国の住人とし、永遠の命をもたらすもので あることを確信することになります。