ルカによる福音書8:1-15
主イエスは、「町や村を巡って旅を続けられた」と伝えています。この旅は主イ エスの個人的な働きではなく、主が選ばれた12弟子とほかの婦人たちも加わった 旅ですから、後の教会の共同体の先駆になる集団の働きです。ここには興味深い特 徴を見ることができます。第一に、この共同体は旅をする共同体です。定住し一つ の場所に人々を集めるのではなく、共同体の方が出かけて、福音を必要とする人々 の近くにまで行くのです。次に、この共同体は女性も加わっていて、この時代と社 会のことを考えると驚きです。「悪霊を追い出して病気を癒していただいた人たち」 と記されて、何人かの名前が挙げられています。そのような前歴があっても、ある いはそのような前歴の故に、共同体の中では重要な役割を担っています。女性が黒 いベールをかぶり、名前のない人としてあるのではなく、「持ち物を出し合って一 行に奉仕していた」のですから、主イエスも支えられていたわけです。男性と女性 とが性によって結び合わされるだけの、それ故にその関係に秩序をもたらすために、 女性を顔を覆った、名前のない影の存在として扱うことから解放されていることを 見ることができます。神の国の現実を先取りしている共同体の姿です。第三の特徴 は最も重要なことですが、神の国の到来を告げ知らせ、福音を伝える共同体だとい うことです。神の支配は遠い架空のことではなく、まさに目の見えない者が見える ようになり、貧しい人に福音が告げられるというかたちでいまここにおける現実に なっていることを証し告げる共同体です。主イエス・キリストの十字架の死と復活、 昇天、そして聖霊の降臨という、主の出来事を経験してたてられた主の体である教 会も、このような特徴と目標を受け継いでいることは明らかです。この中心には生 きているキリストがおられます。このような特徴を失ったら、教会は主のいない共 同体になってしまいます。 この共同体の語る福音は、種を蒔く人のたとえによってその内容が示されていま す。これを三つの失敗例からでなく一つの成功例から学ぶことが重要です。神の言 葉は種のように本来100倍にもなる力を一つ一つに秘めています。それはまさに、 神の国の現実があらわされています。人間の知恵をもって賢く振る舞おうとすると 見えなくなりますが、そこに神の国の秘密があります。そのことを知っている人は、 道ばたに落ちるか、石地か、茨の中かなど気にしないでどんどん蒔き続けることが できるでしょう。